ダウト! ~ 鉄槌トランプ

ワインブーム期に、異常気象下に大発生するムシのように、突如、世間にはびこったエセワイン通。

 

本来、「通」とは、その道に深く通じ、そして、礼節伴う美しき人々である。


しかし、「エセワイン通」の皆さんは
・ 歴史がない ので、昔の体験がない
・ 経験が浅い ので、広くて浅くて深くない
・ 深みがない ので、礼節をわきまえない
の「ないないづくしのないづくし」。

 

そういうわけで自称では「ワイン通」だが、他人様からは、
「ワイオタ(=ワインオタク)」
と呼ばれ、忌み嫌われる存在となってしまったのだ。

 

そして「ワイオタ」の皆さんは来る日も来る日もワインバーにお出かけ。
なぜレストランではないのかというと、
・ 一人で行ってもヘンじゃない
・ 料理を食べる代金までワインに注ぎ込める
・ カウンター席で話ができる
・ 毎日通って常連になれる
・ グラスワインで種類を楽しめる
などなど、そんなところが理由だろう。

 

当時、ワインバーのカウンターからは、ワイオタたちのうんちくに彩られた自慢話が、
まるで、針の跳んだレコードプレーヤーのように聞こえつづけてきたのである。

 


ワイオタA「この前さぁ久々にイケム飲むチャンスがあってさぁ」

ワイオタB「へぇ~。いいね。何年?」

ワイオタA「それが最近、たまたま試飲会で知り合ったシェフの店でね」

ワイオタB「あぁ~俺、最近、試飲会顔出すチャンスがないんだよねぇ」

ワイオタA「でさぁシェフと妙に気が合っちゃったせいか、サービスでグラス一杯、ね」

ワイオタB「ふぅん。サービスでイケムかよ。隅に置けないねぇ。で、何年?」

ワイオタA「その日たまたま誕生日だったんだ、俺の。で、バースデー年をね」

ワイオタB「すごいジャン。お前何年生まれだっけ?」

ワイオタA「72」

 

 

 

 

 

ダウト。

 

 

 


生産されてません。

 

 

ワイオタB「ふうん。いい熟成してるだろうけど、まだまだ若いね」

ワイオタA「まあね」

ワイオタB「5年前に飲んだ64でもまだ全然若かったもんなぁ」

 

 


ダウト。

そのヴィンテージも生産されてません。

 


ワイオタA「もったいない感じだけど、でもワインは飲んでこそ意味あるしさ」

ワイオタB「たしかに。そういや俺もこの前、ちょっと珍しいのをごちそうになったな」

ワイオタA「なんだい?」

ワイオタB「いや、お前と比べたらしれてるよ。イタリア人の友達んちでなんだけどね」

ワイオタA「え? お前イタリアンの友達なんていたんだ」

ワイオタB「うん。そいつがたまたまタスカンでさぁ」

ワイオタA「ほう。じゃあスーパーのいいヤツだね」

ワイオタB「うん。ボルドーがオフで飲めなくてもタスカンのカベルネはいい年さ」

ワイオタA「何の何年?」

ワイオタB「77オルネライア」

 

 


ダウト。
ファーストリリース以前のヴィンテージです。

 

 


ワイオタA「へぇ。そのヘンは正規じゃ無理だよねぇ」

ワイオタB「まあね。現地にツレのいる特権かな」

 

 

そのツレの存在もダウト。

 

 

ワイオタA「でもタスカンもいいけどやっぱ最後はフランスに帰ってきちゃうんだよね」

ワイオタB「そうだね。俺も原点はフランスかな」

ワイオタA「まあ、元々フランスから入ったせいもあるんだけどさ」

 

 

ダウト。
チリカベはフランスワインではありません。

 

 

ワイオタB「俺もそうだからな」

 


ダウト。

 


ワイオタA「結局、10年かけてフランス回帰する、それがワイン好きってものかもね」

 

 

ダウト。

あなたのワインブームは去年からです。

 


ワイオタB「最初に感動したワインもフランスだからね。原体験って怖いよ」

ワイオタA「俺は今考えりゃたいしたワインじゃないけど70のダルマヤックだったなぁ」

 


ダウト。

その頃ダルマヤックはムートン・バロン・フィリップでした。

 


ワイオタB「シブいねぇ。俺はブル白が原体験なんだよね」

ワイオタA「なに?」

ワイオタB「いや恥ずかしいんだけどさ、ルイ・ジャドのクロ・ヴジョの白」

 


ダウト。
モノポールです。

 

 

ワイオタA「へえ~。マニアックだねえ」

ワイオタB「まあ、昔は安かったからね」

ワイオタA「これからちょっといいワインはどんどん高くなってくんだろうなあ」

ワイオタB「誰も彼もがワインワイン、やってらんないねえ」

ワイオタA「そうだね。そっとしといて欲しいよね」

ワイオタB「でも、きっと高くなってもワインからは離れられないだろうなぁ」

ワイオタA「そうだな。俺も一生ワインとともに生きてくことになるんだろうなあ」

 

 

 

 

 

ダウト!

 

 

 


その発言、まるごと、ダウト。 


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2011>>
これも「VinetX」からもってきました。
なので2003年のネタですね。

「お笑いわいん時計屋」が1999年だと思うと、俺、四年も同じ事やってたんだなあと、感慨深いです。
(今も、な)

微妙な事実関係にやや今となっては自信がありませんが、(オルネライアのファーストヴィンテージって何年だっけ? とかそういうコト)まあ、当時のままで掲載しておきます。
おいおい調べなおすかもしれません。

まあ勢いがあったってことで。


2015>>
このやたらと空行入れたりする書き方は、もう今となってはやりたくないんですけど、これはネタに「溜め」が大事かなと思うので、このまま掲載しました。
あと、なんかタイトルの「鉄槌トランプ」っていうのも、サブカル出身感出てますね。ユメキュウ先生の影響もあります。

 

 

 

1930,51,52,64,72,74年が作られてないっぽいです。

 

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バロンヌにもなる以前です。

 

レリティエ・ギュイヨ時代が懐かしいですね。

サン・ブリ~ブルゴーニュ大管区の攻防

1970年代頃から、フランスワインの法定格付けに静かな異変は起きていた。

フランスの地に強大な権力を持ち、ワインにおいては無敵の独裁体制を敷いてきたINAO帝国は、その勢力をさらに延ばさんと、下位格付けのVDQS連邦に属する独立小国家を次々と、みずからの統治するAOC連合に併合し始めたのである。

しかし併合における過程は、決して平坦な道のりではなかった。いずれのVDQSワインも、その地に古くから根付いてきたものたち。静かだった小国家では、INAO帝国の介入を引鉄に、時として、おらが村を守らんとする古風な百姓と、新しい規格に憧れる黒船ウェルカムな住民たちとの間に、血で血を洗う抗争が起こることも珍しくはなかったのである。

だがそこはさすがに、二十一世紀を視野に併合を進める近代国家、INAO帝国。武力行使ですべてを済ませてきた大戦時の第三帝国とは違い、時には、的外れな南仏に、なぜか根付いていた、うっかりもののカベルネを認可したり、「そんなもん全部、蒸留してオー・ド・ヴィのアペラシオンに入れちまえ!」と叫びたくなるような地方のワインのために、新しい規格を作ったりと 、穏健路線で併合受諾への懐柔を進めたのである。

さらに、最初期の1973年に併合した、コトー・デュ・トリカスタンが2008年のトリカスタン原発事故による、風評被害でワインの販売機会を失いかけたときには、アペラシオンの名称自体をグリニャン・レ・ザデマールに変更してやるといった、アフターケアも万全な姿勢まで打ち出したのだ。なんでそんな呼びにくい名前にしたのかは、よく分からんが。

そんな中、ひとつのドラマは起きていた。

2003年、あるVDQS連邦の小国家が、AOC連合に併合されることになる。そのVDQS名は「ソーヴィニヨン・ド・サン・ブリ」。INAO帝国統治下のブルゴーニュ地方大管区に最後に残った、VDQSワインであった。

ここを併合できれば、ブルゴーニュ大管区統一の野望は成し遂げられる。INAO帝国の作戦本部には、この地を手中に収めるための知恵を出すべく、ソーヴィニヨン・ブラン戦略の専門家として知られた、経験豊富な作戦参謀たちが集められていた。

サンセール大尉
プイィ・フュメ大尉
カンシー少尉
ムヌトゥー・サロン准尉

の四名である。


最初、間違えて、プイィ・フュイッセ大尉も召集されたらしいが、そのあたりはありがちな混同。フュイッセ大尉も、ことを荒立てることなく、会議の席を後にしてくれた。

四名が話し合ったのは、その呼称について。なんでも併合の条件として、小国家側からは、ワイン名の変更をしないこと、という条件が掲げられていたらしい。

ブルゴーニュなのにソーヴィニヨン・ブランを使っているということを、領民に告知し続けたいということか」
「そうだな。地元消費中心だからな。AOC連合に門戸を開くことで、近隣のシャルドネ流入してくるのに備えて差別化しておかないと、地元のワインが消費されなくなるかもしれんと、恐れているのだろう」
「領土内で以前から独立する形でAOC連合入りしている、イランシー特別区の人気がイマイチというのも、影響してるのかもしれませんね」
「ありゃ、周辺のピノAOCのせいとばかりはいえんだろう。止めておけといってるのに、セザールなんてブドウを混醸するからいかんのだ。ピノだけで作っておけばいいものを」
「いや、それでは個性がなくなるではありませんか」
「だが、そんなことをするから、お前はパストゥグランかみたいなツッコミが、いつまで経ってもかわせんのだよ。土地の個性だなんだにこだわりすぎなのだ。駆け引きのイロハも分かっていない。ボウヤだからさ」

四つの頭脳は喧々囂々、議論を戦わせていた。中でも強大な発言権を持ち、そして互いにライバル意識をむき出しにしていたのが、サンセール大尉と、プイィ・フュメ大尉の両名であった。

サンセール大尉がそもそもの穏健路線を支持して、「その名称を残せ」といえば、プイィ・フュメ大尉は強行に「聖なる名称のサンを名乗るのもおこがましいわ。もういっそブリにしてしまえ!」と主張する始末で、両者より若い、カンシー少尉とムヌトゥー・サロン准尉には口を挟む隙すらない。

このままでは、作戦そのものが頓挫するのではないかという有り様であった。

だが、その時作戦本部の奥、高級士官室のドアが開き、一陣の風が吹いた。

「名前、短いほうが売れますぞ」
現れたのは、ブルゴーニュ特区の重鎮の一人、ビアンヴニュ・バタール・モンラッシェ少佐であった。
「ワシより、バタール・モンラッシェ中佐、バタール中佐より、モンラッシェ大佐。分かるだろ」
その通達は、速やかに小国家の代表へと伝えられた。
そしてそれは受け入れられたのである。

こうして2003年、アペラシオン「サン・ブリ」が誕生したというのは、VDQS規格が消滅した2011年以降も、歴史の闇に封印されたままである。


次回
「死闘! コート・デュ・ブリュロワ」
に続く(わけがない)。

 

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くだんのブリさん

 

サンセール大尉

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プイィ・フュメ大尉

 

カンシー少尉

 

ムヌトゥー・サロン准尉

 

穏健派

 

ビアンヴニュ(以下略)少佐

 

コート・デュ・ブリュロワ(どこ!?)

ポムロル~シンデレラの目覚めを許さない平和理論

ボルドー赤の銘醸地を分類整理するとしたら、まず最初のひと太刀は河の左岸、右岸という区切りで、誰しも文句はいうまい。左岸は当然メドック、グラーヴで、不変の厳然たる格付けに支配された、身分社会だ。

対する右岸を代表するのは、サンテミリオンとポムロルということになるだろう。そのうちサンテミリオンは、こちらも格付け社会。ただし、その格付けは定期的に見なおされており、その都度、新進勢力が台頭してくるなど、参院選のような様相を呈している。

さて、問題はポムロルだ。ボルドーの四大赤ワイン銘醸地の中で、格付けのないここは、まさに無法地帯。古くからフランス国内にとどまらず、世界中のワインを見てもトップクラスの高値で取引をされてきた、ペトリュスの存在は別格として、それ以外はフリーダム。歴史のある安定勢力はあるにはあるが、ル・パンのように、ペトリュスの地位に肉薄するかのような勢いを持つシンデレラが、突如現れる油断ならない地区なのだ。

しかし面白いことに、シンデレラブームのようなものがひと段落した今、あらためて見てみると、ル・パンを除けば、このアペラシオンの最上位に名を連ねているのは、意外にも歴史のあるシャトーがほとんどであることに気付く。

かつてサンテミリオンは、ヴァランドロー、テルトル・ロトブフといった、一夜明けたらのオーバーナイト・サクセスの実在を世界に知らしめた、シンデレラシャトーの一団を生み出した。そして彼らは今も、昇り詰めたその地位をある程度はキープし、旧勢力と肩を並べたまま、安定勢力の仲間入りを果たしている。

また左岸もマルゴーあたりでは、小規模なワイナリーが作るワインが、下位格付けのシャトーを超える高値を付けて、ガレージシャトーなどという言葉を広めた時期があった。

比べてポムロルは、こんなに自由に何かが起こせる条件を備えながら、地区全体を飲み込みかねない大きな変革の波というものが立ったことがない、不思議なアペラシオンなのではないだろうか。なぜだ。

押し寄せろ、ビッグウエンズデー!
叫べ、若き闘士の魂よ!


あれ?


へんじがない。ただのしかばねのようだ。


結局、体制のないところには反体制は生まれず、政府なきところに革命は起きないのだ、という、ある種の平和理論を想起せずにはいられない。

 

 

 

メドック

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グラーヴ。

 

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へんじがない。ただのしかばねのようだ。

カバルデス~身分を超え民兵団の先陣を切る若き旗手

「コンニチハ! 1999年にAOCに昇格したカバルデスです! よろしくお願いいたします!」

これをやりたかっだけなので、ここで終わってもいいのだが、それやるとダジャレの方向に突撃しそうなイヤな予感がするので、話、続けます。

単なる南仏の安ワインといってしまえばそれまでなのだが、このアペラシオンの面白いところは、そのセパージュにある。

カベルネ・ソーヴィニヨン+メルロ+カベルネ・フラン …… 40%以上
グルナッシュ+シラー …… 40%以上
マルベックなど …… 残り

なんじゃこりゃ。

この手のブドウの組合せで素晴らしいワインを生み出していた、プロヴァンスの銘酒は、「土地の個性を守れ」の大号令のもと、コトー・デクサン・プロヴァンスAOC認可を失ったというのに、この豪快なセパージュ。

なんかまかり間違ったら、ボルドーとローヌのいいところをすべて備えた、ものすごいモンスターワインが生まれそうな気がするが、実際のところそんな話は聞かない。

まあ、まだ発展途上のアペラシオンでもあるだろうし、そもそもAOCの下のクラスとなるVDQSのワインを作っていた生産者たちが、いきなりそんな革命ベクトルに動くには、設備も資金も足りないのだろうと推察する。

ただ、この地にもし、ボルドーの大手シャトー資本やローヌのビッグネゴシアンが、本気で爆弾を投下でもしたら、なにか起きるような気はしてならない。事実、元シャトー・なんとかの醸造長がちょっと顔出してみたり、いろいろあることにはあるようだ。

集え! 革命の志士! 集合の地は、カバルデスです!!

それにしてもこういうセパージュがそのまま認可されてしまうのは、もともとAOCより規定の緩かった、VDQSワインからの昇格ならではの椿事じゃなかろうか。そう考えると、古くから評価の高かった産地が、損しているような気がしないでもない。

ただ、「ワインとしての格が上」イコール「市場価格も高い、海外需要も多い」という事実はあっただろうし、それを歴史の上で積み重ねてきたら、AOCワインの産地は、この手の産地よりはるか昔から、評価や収入など多岐に渡り、格付けの恩恵を受けてきたことになるわけで、どちらがよかったのかという結論が出るのは、未来世紀まで持ち越しておきたい。

時代は今まさに倒幕の空気が漂いだし、四民平等の世が訪れる予感に包まれ始めたというところなのだろう。そして反乱軍と呼ばれる一味に身を置く彼は、思わぬ武器を手にしていたことに、ようやく気付いたのだ。

「俺の手にあるこのセパージュとやらは、徳川の世を終わらせる最終兵器かもしれぬ!」

バルデスは、VDQSという身分層を脱した民兵団の先陣を切る、若き旗手なのかもしれない。なんかカッコいいな、カバルデス

 

 

ボルドーの大手シャトー資本様。

 

ローヌのビッグネゴシアン様。

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バルデス、デス!

 

戦国世を終わらせ太平の時代を築いた、徳川の世もいつか終わりを迎えるのです。

セロン~そしてセロンは世論の下、伝説となる

ルーピヤック、カディヤック、サント・クロワ・デュ・モン、モンバジャック、パシュラン・デュ・ヴィク・ビル、ジュランソン。

ボルドーから南西地方にかけては、かの銘醸甘口ワイン、ソーテルヌとバルザックのスタイルを縮小コピーしたかのような、甘口ワインの産地が点在している。

ソーテルヌと河を挟んだ対岸に位置する、ルーピヤック、カディヤック、サント・クロワ・デュ・モンは、ブドウ品種も含めて、まさにソーテルヌ風の甘口ワインを少し軽くしたような仕上がりを見せているし、南西地方の中でもボルドーにほど近いモンバジャックもその芸風。

パシュラン・デュ・ヴィク・ビル、ジュランソンはその地のブドウを活かし、マーマレードや蜂蜜のニュアンスのある、甘口ワインでその個性を主張することに成功しているのだ。

そんな中、市場でもっとも見ないこの方向性のアペラシオンがセロンではなかろうか。ソーテルヌと対岸どころか、同じ岸に位置しているし、バルサックとはお隣。立地的には、他の同傾向のアペラシオンを一歩リードしているようにも思えるのだが、とにかく見ない。

若かりし日、フランス中のアペラシオンをすべて飲んでやると燃えていたことがあり、イランシーもコトー・シャンプノワもイルレギーも気合で見つけたけど、セロンは断念した記憶がある。

初めてこのアペラシオンのワインを見つけたのは、ロンドンのハロッズのワイン売り場だった。飛びつくようにレジに持って行って、手に入れたその作り手の名はたしか、シャトー・ド・セロン。そのまんま。それ以来、このアペラシオンのワインを生で見たことはない。

なぜセロンのワインはこんなに見ないのか。なにか、飲むと大変なことが起きるような呪いがかけられているとか、ものすごいコレクターがいて世界中のセロンはそこに集約されているとか、そもそもセロンを作ることは世論が許さないとか、そんなタブーを伴うようなエピソードでもあるのだろうか。

と、ちょっとドラマティックに盛り上がってみたが、なんのことはない。辛口のワインを作れば、この地はグラーヴを名乗れるのだ。
ボルドーの辛口白ワインというと、需要の面でどうなのよ? という気がしないでもないが、それでも甘口ワインよりは需要があるということなのだろう。

とりあえず辛口の白の方が売れる!

仕方ない。ワインファンの辛口への嗜好の変化は、ドイツワインを見ても一目瞭然。

そもそも甘口ワインの出番は、食事とともにほかの泡なのか白なのか赤なのかを楽しんだ、そのあとにやってくるということを思えば、甘口を優先して作るメリットは少ないのだろう。

しかも地位的評価はソーテルヌに後塵を拝し、その次を狙えば、ライバルは多数だ。ちょっと寂しい気もするが、辛口を作ってグラーヴの名で売るという選択肢がある以上、セロンのワインはいつか、「辛口のほうが売れるよ」という世論の下、市場から姿を消し、伝説となるのかもしれない。

 

 

お、あるもんですね。ルーピヤック。

 

カディヤックなんてのもあるんですねえ。

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名前が長いけどサントってつくとなんかカッコいい。

 

パーカーさん100点騒動であちこちが騒ぎまくってまつりあげちゃったやつですね。

 

名前が長いと覚えてくれないという日本のワイン市場の伝統に反して、質が良く安い甘口ワインだからでしょうか。パシュラン・デ・ヴィク・ビルはワインブームだなんだの頃から、ずっと日本で買えますね。特にこのシャトー・ダイデイは早くから500ミリリットルの甘口ワインらしいサイズも出ていたし、実際初めて自分が手にしたときは1996年くらいのヴィンテージでしたからねぇ。感慨深いです。近所の小学生がいつの間にか、適齢期のちょっとドキッとするような女の子になってた、みたいな感じがなくもないです。

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南西地方の甘口といえば、これが別格だったはずなんですけど、例のキュヴェ・マダムがパーカー100点だなんだ騒動とか、ロワールのアヴンギャルド・ロック・スター、ディディエさんの進出で、なんだかすっかり忘れられた存在になってしまいましたね。

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これにゃびっくりしましたよね。もう息子さんの代になってからのヴィンテージですが。

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こちらはまだディディエさん時代。イケイケドンドンだった頃の遺産です。

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結局「ACセロン」は見つかりませんでした。やっぱね。まさにセロンという悪夢です。

ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ~ご近所みんな佐々木さん(佐藤さんでも鈴木さんでもいいけど)

それにしてもマスカットというブドウは面白い。日本国内では生食用のブドウとして古くから人気が高く、しかもわりとお値段も高い高級品だし、マスカット100%のジュースなんていうのも、ただのグレープジュースより格上な扱いを受けている。一転、ヨーロッパのワイン産国に目を向けるとどうだ。

イタリアではモスカートの名で、味も価格も親しみやすいプチプチ微発泡の甘口ワインと、昔はみんなそれがシャンペンだと信じてたフレンドリーなスプマンテアスティを生み出している。一方で、マスカットがもっともカオスな事態を巻き起こしているのが、ほかならぬフランスだ。

ドイツ国境のアルザスでは、品種の持つ甘やかな香りをバリバリと活かしながら、なぜか基本辛口の白ワイン作っている。しかもそのブドウそのものの位置付けは、リーズナブルな大衆向けのワインを生み出すイタリアとは違い、アルザスの四大高貴品種に指定されるほどの上位格付け。なのにワイン自体はシルヴァネールより見かけないという謎のポジション。ピノ・グリと四大品種の四番目の座をかけて、絶賛合戦中という有様だ。

しかし、そもそも熟成させて複雑性を増すことより、あまりにもアロマティックな、このブドウ。正攻法で行くなら、そのアロマを活かして、イタリアのようなシンプルな甘口を作ることになるんじゃないかという気はする。マスカットブドウの辛口ワインというのは、世界でも特異な存在だ。

そこでフランス全土を見渡してみると、なんだか南のほうが賑やかだということに気付くことになるだろう。

ローヌから、ラングドック、ルーションにかけて、

ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ
ミュスカ・ド・フロンティニャン
ミュスカ・ド・リュネル
ミュスカ・ド・ミルヴァル
ミュスカ・ド・サン・ジャン・ド・ミネルヴォワ
ミュスカ・ド・リヴザルト
ミュスカ・デュ・カップ・コルス

と、ご近所の苗字が「みんな佐々木さん」な山間の集落みたいな様相が展開されている。

南のミュスカは、基本すべて甘口仕立てで、辛口の高級ワインというスローガンを掲げたアルザスのミュスカが、下克上目指して名乗りを上げたものの、足軽を脱出したところで伸び悩んでる田舎侍だとしたら、農民のまま槍を持ってとりあえず立ち上がった百姓一揆のような潔さを感じないでもない。

そもそも熟成とか、リースリングに歯向かうとかそういう方向性ではなく、潔くスカッとマスカットな感じが心地よく、ワインの味わいそのものもそういう感じだ。

ちなみにこの南のマスカットさんたち、基本的にはヴァン・ドゥー・ナチュレルだと思っておいて問題ないが、アペラシオンによってはヴァン・ド・リクールも認可されていたりして、なかなかややこしい。

だが、今回タイトルにミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズを選んだものの、結局みんなまとめて紹介しちゃったあたりでご理解いただけるように、そのあたりは、そんなに気にするほどのものでもない。

 

 

佐々木さん。

ニュイ・サン・ジョルジュ~押し寄せる暴徒の波に屈した悲劇の彗星

赤ワインの銘醸地として名だたるコート・ド・ニュイに位置しながら、なんとなく一歩置かれた感じのあるアペラシオン、ニュイ・サン・ジョルジュ。彼の地の最南端であるという立地条件のせいなのか、それとも他の村にはあるグラン・クリュがないという土地の格付けのせいなのかはわからないが、とにかくなんとなく、ニュイの赤ワインの中では一歩、取り残された感じが否めないアペラシオンだ。

生まれるワインは一般的に、力強さがあって、熟成に耐えるという評価を得ているし、人気の作り手も多数この村に畑を構えている。それなのに、イマイチ盛り上がらないアペラシオンなのは、なぜだ。

この村のワインの力強いという個性は、重くて野暮ったいと紙一重。人気の作り手が作っていてもそのラインナップの中では下位銘柄みたいな扱いを受けてしまっいる感じが、拭い去れない。

しかし、そんなニュイ・サン・ジョルジュにも脚光を浴びた時代はあった。二十世紀末の突如起こったワインブームの頃は、比較的手頃値段で飲み応えのあるコート・ド・ニュイの赤として、それなりに人気を博したのだ。

はて、今にして思えば、あの時のブームを牽引した赤ワインは、重くて渋くてフルボディ。そしてお手軽プライス。その目の前にある千円のチリカベが、本当に重いのか、渋いのか、フルボディなのかを差し置いても、安くてカベルネ上等! な時代だった。

そう考えれば、ニュイ・サン・ジョルジュがブルゴーニュの中で、もてはやされたのも理解できる。比較的重厚で比較的リーズナブル。そんな特徴を備えたピノ・ノワールはこの村にこそ、存在していたのだ。ではその後の市場人気の衰退は、なぜ起きてしまったのか。

それは、一言で言うなら低温長期浸漬みたいな方法で、色濃いブルゴーニュワインを特定の評論家対策として推奨して、彗星のように現れて、又三郎もびっくりの速度で消え去った迷匠「ギィ・アッカの呪い」ということにしておこうか。

あまりにもテロワールを無視して、特定の評論家の点数稼ぎに走った濃厚なピノ・ノワールの登場に、古くからのブルゴーニュ愛好家の一揆が起きてしまったのだ。


あそっれ、

一揆


一揆


一揆


一揆


そしてアペラシオンのせいでもなんでもなかったのに、某氏の呪いにかかったドメーヌが存在していという事実や、そもそもテロワールの関係で力強いワインを生みやすかったという特性が、ニュイ・サン・ジョルジュ=ちょっと俺たち真のブル好きにはどうかなみたいな押し寄せる暴徒の波に飲まれてしまったような気がしてならない。

まあ、マルサネもフイクサンもいるじゃないか「ドンマーーーイ!」

 

 

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一気!

 

一騎!

 

一樹!

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ラルロは醸造責任者が続けて交代していて目が離せませんね。