ブーズロン

このアペラシオンを語るとき、どうしても外せない造り手がいることは、いうまでもないだろう。世界でもっとも高価なワインといって差し支えない、あのワインの畑のオーナーである。その名前は、今ここであえて挙げる必要もないだろう。

そもそもブーズロンのワインのもとになるアリゴテというブドウは、ブルゴーニュ地方の白ワイン用品種のヒエラルキにおいて、シャルドネに大差でぶっちぎられてゴールインする二着みたいな存在でしかない。

さらにそのアリゴテから生まれるワインの歴史を紐解くと、1940年代には地元の市長があまりの酸っぱさに持て余し、クレーム・ド・カシスをぶち込んでカクテルにしてしまったほどのキレ味あるエピソードが登場するのだ。当時のそれは、辛口の白ワインとして、そのまま食前酒にするのも躊躇われるほどの「酸っぱードライ」もとい、スーパードライなワインだったのではなかろうか。

しかし先述のあの造り手が、この地でワインを作りだしてからというもの、何かが変化し始めた。彼が生むワインの品質が世界を変えた。いつしかブーズロンはアリゴテを使用して村名を名乗れる、唯一のアペラシオンに昇格を果たしたのだ。ライジングスターの登場だ。

ただなんとなく気になるのは、アリゴテの地位やブーズロンという土地の格が上がったわけではなく、かの造り手の名声がさらに高まっただけのような気がすることではないだろうか。

どこで作ってもすごい。
アリゴテごときでもここまでやる。
やっぱあの人すごい。

そんな感じであらためて評価を押し上げてくるあたり、経営者が代替わりした際に、歴史ある一流企業が異業種への参入を発表、そしてそこをみごと勝ち残り、二代目が「坊っちゃん」から「若きカリスマ」へと昇格する姿に似ているかもしれない。

だがやはり気になるのは、ブランドが持つ、そもそもの威光というやつだ。あの本家の名声があるかぎり、「そもそもこのワインはよく出来ているはず」という先入観を持って、このワインを評価してはいないだろうか。

まあ実際のところアリゴテとしては密度は高く、カシスを足すのはもったいなく感じるし、一人の愛飲家として口にするのであれば、そのワインを貶めるべき理由はなんら見当たらない。

むしろ弾劾すべきは、自分はそんなこと思ってもいないのに「白いロマネ・コンティ」というフレーズで商売しちゃった人たちだろう。あ、「あのワインの畑」の名前出しちゃったじゃん。

ちなみにこの部分に対して「いや、俺は本当にあの白は本家のレベルだと思うよ」と返してくるワイン屋さんがいたら、別の意味で信用できない。

 

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更なる進化を遂げて『バローロにおける白いロマネコンティ!!』ってことになってます。表現における言葉のインフレみたいなもんでしょうか。フツウに酸の強いキリリ系辛口白ワインです。バローロの生産者ですけどこのワインはバローロではありません。WS誌が「バローロロマネ・コンティ」とし評しているのは、この作り手さんの正真正銘のバローロのことです。念のため。