セロン~そしてセロンは世論の下、伝説となる
ルーピヤック、カディヤック、サント・クロワ・デュ・モン、モンバジャック、パシュラン・デュ・ヴィク・ビル、ジュランソン。
ボルドーから南西地方にかけては、かの銘醸甘口ワイン、ソーテルヌとバルザックのスタイルを縮小コピーしたかのような、甘口ワインの産地が点在している。
ソーテルヌと河を挟んだ対岸に位置する、ルーピヤック、カディヤック、サント・クロワ・デュ・モンは、ブドウ品種も含めて、まさにソーテルヌ風の甘口ワインを少し軽くしたような仕上がりを見せているし、南西地方の中でもボルドーにほど近いモンバジャックもその芸風。
パシュラン・デュ・ヴィク・ビル、ジュランソンはその地のブドウを活かし、マーマレードや蜂蜜のニュアンスのある、甘口ワインでその個性を主張することに成功しているのだ。
そんな中、市場でもっとも見ないこの方向性のアペラシオンがセロンではなかろうか。ソーテルヌと対岸どころか、同じ岸に位置しているし、バルサックとはお隣。立地的には、他の同傾向のアペラシオンを一歩リードしているようにも思えるのだが、とにかく見ない。
若かりし日、フランス中のアペラシオンをすべて飲んでやると燃えていたことがあり、イランシーもコトー・シャンプノワもイルレギーも気合で見つけたけど、セロンは断念した記憶がある。
初めてこのアペラシオンのワインを見つけたのは、ロンドンのハロッズのワイン売り場だった。飛びつくようにレジに持って行って、手に入れたその作り手の名はたしか、シャトー・ド・セロン。そのまんま。それ以来、このアペラシオンのワインを生で見たことはない。
なぜセロンのワインはこんなに見ないのか。なにか、飲むと大変なことが起きるような呪いがかけられているとか、ものすごいコレクターがいて世界中のセロンはそこに集約されているとか、そもそもセロンを作ることは世論が許さないとか、そんなタブーを伴うようなエピソードでもあるのだろうか。
と、ちょっとドラマティックに盛り上がってみたが、なんのことはない。辛口のワインを作れば、この地はグラーヴを名乗れるのだ。
ボルドーの辛口白ワインというと、需要の面でどうなのよ? という気がしないでもないが、それでも甘口ワインよりは需要があるということなのだろう。
とりあえず辛口の白の方が売れる!
仕方ない。ワインファンの辛口への嗜好の変化は、ドイツワインを見ても一目瞭然。
そもそも甘口ワインの出番は、食事とともにほかの泡なのか白なのか赤なのかを楽しんだ、そのあとにやってくるということを思えば、甘口を優先して作るメリットは少ないのだろう。
しかも地位的評価はソーテルヌに後塵を拝し、その次を狙えば、ライバルは多数だ。ちょっと寂しい気もするが、辛口を作ってグラーヴの名で売るという選択肢がある以上、セロンのワインはいつか、「辛口のほうが売れるよ」という世論の下、市場から姿を消し、伝説となるのかもしれない。
シャトー・セギュール・デュ・クロ ルーピアック [... |
お、あるもんですね。ルーピヤック。 |
ACカディヤック/シャトー ラグランジュ カディヤック ス... |
カディヤックなんてのもあるんですねえ。 |
[2011] CH.ラ・コサード 750ml 12.9%A.O... |
名前が長いけどサントってつくとなんかカッコいい。 |
モンバジャック・キュヴェ・マダム 1997 【Ch. ティ... |
パーカーさん100点騒動であちこちが騒ぎまくってまつりあげちゃったやつですね。 |
ピエール・ラプラスパシュラン・デュ・ヴィック・ビル ... |
名前が長いと覚えてくれないという日本のワイン市場の伝統に反して、質が良く安い甘口ワインだからでしょうか。パシュラン・デ・ヴィク・ビルはワインブームだなんだの頃から、ずっと日本で買えますね。特にこのシャトー・ダイデイは早くから500ミリリットルの甘口ワインらしいサイズも出ていたし、実際初めて自分が手にしたときは1996年くらいのヴィンテージでしたからねぇ。感慨深いです。近所の小学生がいつの間にか、適齢期のちょっとドキッとするような女の子になってた、みたいな感じがなくもないです。 |
[2008]ノブレス・デュ・タン ジュラ... |
南西地方の甘口といえば、これが別格だったはずなんですけど、例のキュヴェ・マダムがパーカー100点だなんだ騒動とか、ロワールのアヴンギャルド・ロック・スター、ディディエさんの進出で、なんだかすっかり忘れられた存在になってしまいましたね。 |
レ・ジャルダン・ド・バビロン[... |
これにゃびっくりしましたよね。もう息子さんの代になってからのヴィンテージですが。 |
[2004] Juranson Les Jardins de Babylon... |
こちらはまだディディエさん時代。イケイケドンドンだった頃の遺産です。 |
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結局「ACセロン」は見つかりませんでした。やっぱね。まさにセロンという悪夢です。 |