2015-11-01から1ヶ月間の記事一覧

サン・ブリ~ブルゴーニュ大管区の攻防

1970年代頃から、フランスワインの法定格付けに静かな異変は起きていた。 フランスの地に強大な権力を持ち、ワインにおいては無敵の独裁体制を敷いてきたINAO帝国は、その勢力をさらに延ばさんと、下位格付けのVDQS連邦に属する独立小国家を次々と、みずから…

ポムロル~シンデレラの目覚めを許さない平和理論

ボルドー赤の銘醸地を分類整理するとしたら、まず最初のひと太刀は河の左岸、右岸という区切りで、誰しも文句はいうまい。左岸は当然メドック、グラーヴで、不変の厳然たる格付けに支配された、身分社会だ。 対する右岸を代表するのは、サンテミリオンとポム…

カバルデス~身分を超え民兵団の先陣を切る若き旗手

「コンニチハ! 1999年にAOCに昇格したカバルデスです! よろしくお願いいたします!」 これをやりたかっだけなので、ここで終わってもいいのだが、それやるとダジャレの方向に突撃しそうなイヤな予感がするので、話、続けます。 単なる南仏の安ワインといっ…

セロン~そしてセロンは世論の下、伝説となる

ルーピヤック、カディヤック、サント・クロワ・デュ・モン、モンバジャック、パシュラン・デュ・ヴィク・ビル、ジュランソン。 ボルドーから南西地方にかけては、かの銘醸甘口ワイン、ソーテルヌとバルザックのスタイルを縮小コピーしたかのような、甘口ワイ…

ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴニーズ~ご近所みんな佐々木さん(佐藤さんでも鈴木さんでもいいけど)

それにしてもマスカットというブドウは面白い。日本国内では生食用のブドウとして古くから人気が高く、しかもわりとお値段も高い高級品だし、マスカット100%のジュースなんていうのも、ただのグレープジュースより格上な扱いを受けている。一転、ヨーロッパ…

ニュイ・サン・ジョルジュ~押し寄せる暴徒の波に屈した悲劇の彗星

赤ワインの銘醸地として名だたるコート・ド・ニュイに位置しながら、なんとなく一歩置かれた感じのあるアペラシオン、ニュイ・サン・ジョルジュ。彼の地の最南端であるという立地条件のせいなのか、それとも他の村にはあるグラン・クリュがないという土地の…

ブルグイユ~君はロワールに咲く血の薔薇を見る(見ないかもしれない)

1995年は日本のワイン界において、ひとつの新しい歴史が刻まれた年である。第8回世界最優秀ソムリエコンクールにおいて、我が国の代表が、みごと優勝の栄冠に輝き、世界のソムリエの頂点に立ったのだ。そして訪れたのは未曾有のワインブーム。 かねてから、…

アルザス・グラン・クリュ

フランスで法定の特級格付けでありながら、その位置付けを、誰も気にしていない特級AOCがアルザス・グラン・クリュではなかろうか。サンテミリオン・グラン・クリュもよく似た立ち位置のような気がするが、あっちはもう少しその動向を気にしている人がいそう…

ブーズロン

このアペラシオンを語るとき、どうしても外せない造り手がいることは、いうまでもないだろう。世界でもっとも高価なワインといって差し支えない、あのワインの畑のオーナーである。その名前は、今ここであえて挙げる必要もないだろう。 そもそもブーズロンの…

ロゼ・ダンジュー~愛と追憶と薔薇色の日々

アンジューという地には、赤、白も産出する、まんまアンジューとかアンジュー・ほにゃららという一見この地の代表かと思わせられる名称のアペラシオンもあるにはあるのだが、それらはなかなかメインストリームには出てこない。 そりゃそうだ。正攻法で行くと…

アジャクシオ~孤島に隠された認定試験のラスボス

いきなりぶっこんできたとお思いでしょうが。 このアペラシオン、たぶん「アイウエオ順」で一番最初に来るんじゃなかろうか。なんていうか、学生の頃の名簿でいう「相田さん」とか「相木さん」みたいな立ち位置を確立してるような。本人のキャラはさておき、…

フクセルレーベ

「フクセルレーベ」は1927年、シャスラとクルティリエ・ムスケの交配によって誕生したドイツの交配品種。ただでさえ、大物を配合しないドイツの交配品種の中でも、燦然と輝くような、小物感漂う配合がいとおしさを感じさせる。 ジャンシス女史の解説本による…

ミュスカデ

ロワール河下流でもっとも有名なブドウ「ミュスカデ」。その起源はブルゴーニュにあるという。 現在ロワールで生まれるミュスカデワインは、さらりとした口当たりと、シャープな酸味がかもし出す軽やかな全体像が語られている。しかし、このブドウのワインの…

シンフォニー

「シンフォニー」というこの壮大かつ大仰なネーミング。配品種にわかりやすくもたいそうな名前を付けるのは、ある種のお約束なのかもしれない。 しかしたとえばドイツのバフースのようなネーミング(酒神・バッカスの意味)と違い、英語で付けられると、日本…

ヴィオニエ

「ヴィオニエ」といえばコンドリュー。本来はローヌ北部の一画で、面積は狭いが国民の団結力が高く、財政的にも裕福な独立小国家のような存在であった。 しかし、ここ数年の間に誰かが、ローヌ以外の南仏でこのブドウを植えてしまったからさあ大変。そのアプ…

甲州

日本を代表する白ブドウ「甲州」。 「ヴィニフェラ系に属する東洋系ヨーロッパ品種」という、アフリカの聞いたこともない国出身の素性の知れないマラソンランナーのような肩書きを持つが、立派な日本の在来種である。 過去、日本市場が受け入れた、ワインの…

探偵ワインスクープ

ネットのワインサイト黎明期にお知り合いになった方のサイトで、特によく見ていたし、主宰の方ともネット上で交流があったサイトの現在を調べてみようと思いたちました。 きっかけになったのはこちらの記事。http://plaza.rakuten.co.jp/szwine/diary/201509…

ガルガーネガ

名前のインパクトは強いが味のインパクトは薄い「ガルガーネガ」。しかしなんと言ってもあの「ソアーヴェ」の原料である。日本では古来より親しまれてきたはずのブドウだと言ってよい。 だが実際のところ親しまれてきたのは当時「ソアベ」と表記された飲みや…

ピノ・ブラン

カリフォルニアではシャルドネを模倣したスタイルで、ぐいぐいと頭角を現し、気がつくと本場のブルゴーニュ・ブランより高い「カリフォルニア・ピノ・ブラン」が誕生するという収拾のつかない事態に。しかし、そもそもなぜこんな地味なブドウがそんなところ…

ジャケール&アルテッセ

「ジャケール」と「アルテッセ」。それはまさに「サヴォワのルーサンヌ、マルサンヌ」とでも呼ぶべきタッグブドウ。その地におけるこの組み合わせの定番度合は、フランスブドウ史上、本当にエルミタージュ・ブランに次ぐものかもしれない。 しかし、生み出す…

アリゴテ

世界に名だたるブルゴーニュ白ワイン。その白ワイン界第二の男「アリゴテ」。そう聞くと一瞬すごいのかと思ってしまうが、実際にはそんなに輝いていない。 たしかに、シャルドネに次ぐブルゴーニュ地方の白ワイン用ブドウ品種ではあるが、第三の男がそもそも…

ミュスカ

生食ブドウとしての高級感と、ワイン用ブドウとしての安っぽさのアンバランスさは一体なんなのだろうか。 つまるところ、生食用として香り高く美味しいということは、ワインになってさえ、その新鮮な香りで勝負しなくてはならないため「熟成して複雑な香りが…

ルーサンヌ&マルサンヌ

この世界最高のタッグチームは、不思議とマルサンヌとルーサンヌという順序で呼ばれることはほとんどない。なぜかはしらねど、ルーサンヌのほうは、高級白ワインの原料になっているくせに、「世界のワインの権威」某氏にその著書で、説明をハショられるとい…

ピノ・グリ

まずはっきりとさせておかなくてはならないのは、ピノ・グリは、ピノ・グリージョではない、という点だろう。 そもそもこのブドウの魅力は肉厚でとろりとしたボディ、まろやかな酸味、そして一瞬甘口かと思わせるその全体像である。そのすべててを一言で言い…

シュナン・ブラン

ロワール地方の至宝、サヴニエールとヴーヴレを生み出すのがこのシュナン・ブランである。キンモクセイやカリンの香りにたとえられる甘い香りと、なぜか感じる(特にサヴニエール)シェリーのようなノワゼット香がこの品種の特徴だと言えよう。 若いヴィンテー…

カベルネ・フラン

ボルドー地方においては脇役だが、ロワール地方ではブルトンと呼ばれ、最高級の赤ワイン用ブドウ。そもそも、サンセールのピノ・ノワールを除いて対抗品種がグロロやガメだったりするので、ほぼ不戦勝に近い趣がある。 基本的に、軽やかでフレッシュ、チャー…